研究成果の概要

n-3多価不飽和脂肪酸を多くとる者ほど血清高感度CRP値は低かった。

魚油などに多く含まれるn3多価不飽和脂肪酸(n3PUFA)摂取量が多いほど循環器疾患発症や死亡のリスクが低下することが疫学研究で示されています。そのメカニズムとしてn3PUFAが炎症反応を沈静化させ、そのことが動脈硬化症の進展を抑えて将来の循環器疾患死亡リスクが低下することが仮説としてあげられています。しかし、実際にn3PUFA摂取量が多くなると人体の炎症反応が低下するのかについては、実験的研究や疫学研究の報告例は少なく、上記仮説を支持する研究成果の蓄積が望まれます。

この研究では、岩手県北コホート研究に参加した男女14,191人を対象に食物摂取頻度法による栄養調査(日本動脈硬化縦断研究BDHQ1_1調査票使用)を実施しました。また登録調査では、炎症反応の指標である血清高感度CRP値測定結果を利用して、食品中に含まれるn-3PUFA摂取量と血清高感度CRPとの関係性についての横断解析を試みました。対象者をn-3PUFA摂取量によって4分位に分割し、各グループ別に多変量調整高感度CRPの幾何平均値と95%信頼区間を求めました。さらに非喫煙者、過去喫煙者、喫煙者の3群に分けて同様の解析を行いました。その結果、高感度CRP値は男女ともにn-3不飽和脂肪酸摂取量が多くなるほど低くなるという負の関連性が認められました。この関係性は男性喫煙者群でより明確に観察されました。

n3PUFA摂取が多いほど炎症反応が低くなるという仮説は、疫学研究で観察されたn3PUFA摂取量の多い集団で循環器疾患死亡率が低いという現象を説明する魅力的な仮説です。しかし、栄養調査は精度管理が難しく、解析結果が非常にばらついてしまうため栄養摂取量をリスク要因として横断解析や縦断研究に利用してもきちんとした結果が出にくい特徴があり、このため科学的エビデンスの蓄積が難しい側面があります。本研究では、詳細に収集された対象者属性要因を、うまく交絡要因として多変量解析にもちいることで、n3PUFA摂取が多いほど炎症反応が低くなり、その効果が、炎症反応のもともと亢進していた男性喫煙者でより強く現れたことを示すことに成功した貴重な資料と考えられます。

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本概要の引用元

Ohsawa M, Itai K, Onoda T, Tanno K, Sasaki S, Nakamura M, Ogawa A, Sakata K, Kawamura K, Kuribayashi T, Yoshida Y, Okayama A.Dietary intake of n-3 polyunsaturated fatty acids is inversely associated with CRP levels, especially among male smokers.Atherosclerosis. 2008;201:184-91.