研究成果の概要

MDRD推算式とCKDEPI推算式によって得られた糸球体ろ過量には見過ごすことのできない差がみられる

慢性腎臓病の有無を評価する指標として、血清クレアチニンを用いた簡便な糸球体濾過量(GFR)推算式が普及していますが、ここ数年で推算式が次々と開発され、欧米人を中心に実測値との一致度の比較検討が行われてきました。最新のCKDEPIの提唱する推参式で得られた糸球体濾過量が従来のMDRD推算式より実測値に近いこと、また、予後予測能力が高いことがアメリカ人やカナダ人を対象とした研究で示されており、日本人を対象とした研究成果が期待されます。

岩手県北コホート研究に参加した 26,329 人の男女を対象として、CKDEPI推算式によるGFRとMDRD推算式によるGFRとの一致度を検討しました。対象者をGFR値により8ステージに分けました (ステージA: eGFR ≥105 ml/minute/1.73m2, ステージB: 90-104, ステージC: 75-89, ステージD: 60-74, ステージE: 45-59, ステージF: 30-44, ステージG: 15-29, ステージH: <15) 。男女全体では16,360 (62.1%) で両者のステージ分類が一致していました。9,791人(37.2%)は1ステージのずれが認められました。 178 人では2ステージのずれが認められました (MDRD推算式によるずれはすべて過大評価)。MDRD推算式は、ステージAで過大評価が目立ち、ステージBCDでは過小評価が目立ちました。女性では一致した者は58.4%で男性では69.1%だった。コーエンのカッパ係数(95%信頼区間)は男女全体で 0.456 (0.452-0.456)、 男性で0.554 (0.541-0.567)、 女性で0.405 (0.395-0.415)であり、決して高いものとはいえず、両推算式によって得られたGFRには見過ごすことのできない差があると考えられます。

MDRD推算式は若い人や軽度GFR低下者で過小評価する傾向があり、中高年でGFR60以上の対象者で非常に高く過大評価する傾向にありました。CKDEPI推算式とMDRD推算式によって得られるGFR値は、対象者の年齢によって大きく隔たることが示されたことから、対象集団の年齢構成によっては、CKDEPIとMDRD推算式のどちらかを使うかで大きな違いが結果に表れる可能性があります。

危険因子集積者