研究成果の概要

魚摂取が各種疾患発症に与える影響についてのレビューと岩手県民の魚摂取状況

魚を多く食べることにより心筋梗塞症を初めとした種々の疾患発症率が下がることが知られています。本稿では魚摂取と疾患発症との関連についてのメタアナリシスを紹介し、魚摂取と死亡率や疾患発症率と関連について概説しています。また、特に重要なn-3不飽和脂肪酸の生体内作用について、現在考えられている機序について大まかな説明をしています。最後に、岩手県で行われている県北コホート研究の登録時調査の中で、食物摂取頻度法(日本動脈硬化縦断研究BDHQ1_1調査票使用)を実施した14570名のデータの横断解析を行い、岩手県一般住民がどの程度魚を食べ、脂肪酸を1日あたりどの程度摂取しているのかを明らかにしました。そして欧米人のデータとのと比較を試みました。

メタアナリシスの結果と欧米の栄養所要量ガイドラインをまとめると、欧米人は魚を殆ど摂取しておらず、n-3多価不飽和脂肪酸の大部分が植物由来のαリノレン酸です。循環器疾患発症リスクの高い人ほど魚食事による好影響がでやすい。n-3多価不飽和脂肪酸による生体への効果はn-6多価不飽和脂肪酸摂取によって減弱する。魚の至適摂取量は魚量として40-60グラム/日、n-3多価不飽和脂肪酸量として0.6-1.5グラム/日でとされています。欧米での摂取状況をみるとn-6/n-3比が10前後と報告されています。一方岩手県地域住民は1日当たり3.4グラムのn-3不飽和脂肪酸を摂取しており、n-6/n-3摂取比率は、3.4と理想的な摂取状況でした。

飽和脂肪酸摂取の多い欧米人では、直接EPAやDHAを必要最低限量摂取することが望ましい。岩手県住民のn-3多価不飽和脂肪酸摂取量は英国栄養協会とUSA Expert Panelが提唱した推奨量に近いと考えられました。

魚接種