研究成果の概要

CKDEPI推算式を用いた糸球体ろ過量は、MDRD推算式を用いた場合より死亡リスクを正確に言い当てる。

慢性腎臓病の有無を評価する指標として、血清クレアチニンを用いた簡便な糸球体濾過量(GFR)推算式が普及していますが、欧米人を中心に違った推算式で求められた糸球体濾過量の比較検討が行われてきました。最新のCKDEPIの推参式で得られた糸球体濾過量がより実測値に近いこと、また、予後予測能力が高いことが欧米の研究で示されており、日本人を対象とした研究が望まれます。

岩手県北コホート研究に参加した 24560 人の男女を対象として、CKDEPI推算式によるGFRとMDRD推算式によるGFRで慢性腎臓病(CKD)ステージ分類を行い、その予後予測能力を比較しました。推算GFRによって4ステージ (1: ≥90, 2: 60-89 (reference), 3a: 45-59, 3b+ <45 ml/minute/1.73m2) に分類しました。評価エンドポイントは総死亡、心筋梗塞発症、脳卒中発症の三つです。エンドポイントごとにROC曲線下面積(95%信頼区間)を算出して両推算式の予後予測能力を比較しました。総死亡では0.680 (0.662-0.697) と0.582 (0.562-0.602)、 心筋梗塞では0.718 (0.665-0.771) と 0.642 (0.581-0.703)、脳卒中では0.656 (0.636-0.676) と 0.576 (0.553-0.599)であり、総死亡リスク評価では明らかにCKDEPI推算式が予測能力を上回っていました。次に多変量Cox回帰分析を用いた予測能力の比較検討を行いました。二つの推算式を用いたモデルでは、AIC、BIC、ハレルC統計量はほぼ同一の意値を示し、両者に有意な差は認められませんでした。Net reclassification improvement (NRI) の指標を用いると、CKDEPI推算式を用いた場合には総死亡リスクをよりよく言い当てていることがわかりました。

新しいCKDEPI推算式は旧来のMDRD推算式に比べより実測値に近いことが示されていますが、特に、GFRが軽度低下者や正常値の者でMDRD推算式のずれが生じることが指摘されています。年齢を調整しない粗死亡率を見る場合には明らかにCKDEPI推算式を用いるべきです。一方で、腎機能が中等度以上低下した者ではどちらの推算式を使っても予後予測能力の差はなさそうです。

糸球体ろ過

本概要の引用元

Ohsawa M, Tanno K, Itai K, Turin TC, Okamura T, Ogawa A, Ogasawara K, Fujioka T, Onoda T, Yoshida Y, Omama S, Ishibashi Y, Nakamura M, Makita S, Tanaka F, Kuribayashi T, Koyama T, Sakata K, Okayama A.Comparison of predictability of future cardiovascular events between chronic kidney disease (CKD) stage based on CKD epidemiology collaboration equation and that based on modification of diet in renal disease equation in the Japanese general population--Iwate KENCO Study.Circ J. 2013;77:1315-25.