研究成果の概要

微小炎症反応(高感度CRP値)の上昇は虚血性脳卒中の発症および全死亡と関連する

蒔田真司  Atherosclerosis. 2009;204:234-8.

全身的な微小炎症反応を反映しているとされる高感度CRP値が様々な心血管疾患の発症と関連しているとする報告があり、この数値が心血管疾患発症の予測因子の一つとして使える可能性があります.しかしながらその報告の殆どは欧米人を対象としたもので、本邦での報告は極めて少なく、欧米人よりもCRPがかなり低い値を示す日本人集団でも同様の関連性があるかどうかは不明です.われわれは以前、頸動脈超音波検査で評価した頸動脈内膜肥厚や粥腫形成と高感度CRP値が密接に関連していることを報告し、この関連は男性のみで有意でした.

本研究では、この微小炎症反応の上昇が将来の動脈硬化性疾患の発症を実際に予測出来るか否かについて、地域住民を対象に縦断的解析を行いました.対象は基本健康診査を受診し、高感度CRP値の測定が行われ、心血管疾患の既往がない40歳から80歳までの男性7,091名、平均年齢64.0歳です.

平均2.7年の追跡期間中に虚血性脳卒中発症95例と全死因死亡161例が確認されました.高感度CRP値を3分位に分けて虚血性脳卒中の発症を比較したところ、高感度CRP値が最も高い群は最も低い群に比べて有意に発症が増加していました(種々の古典的動脈硬化危険因子での調整したハザード比は1.77).また、全死因死亡について同様に比較したところ、高感度CRP値が最も低い群に比べて最も高い群の調整ハザード比は2.26と有意に高値でした.

以上の結果から、男性の地域住民では高感度CRP値が他の古典的危険因子に独立して将来の虚血性脳卒中や死亡を予測する因子となり得ることが示されました.ただし、女性については、今回の短期間の追跡結果では発症数が少なかったために高感度CRP値の有用性の検討ができませんでした.また、高感度CRP値は種々の影響により測定の度に大きく変動する可能性があり、1回のみの測定値の評価には注意が必要かもしれません.

本概要の引用元

Makita S, Nakamura M, Satoh K, Tanaka F, Onoda T, Kawamura K, Ohsawa M, Tanno K, Itai K, Sakata K, Okayama A, Terayama Y, Yoshida Y, Ogawa A.Serum C-reactive protein levels can be used to predict future ischemic stroke and mortality in Japanese men from the general population.Atherosclerosis. 2009;204:234-8.