研究成果の概要
岩手県北部沿岸地域には高度肥満者が集積する
岩手県北コホート研究参加者の概要を記した板井らの論文では、このコホート研究参加者の特徴が述べられました。その中でこのコホート研究参加者の平均BMIどの世代でも高いことが示され、コホート集団を特徴付ける属性として肥満者が多いことがあげられました。岩手県は全国の集計結果でも肥満者割合が高い県として認知されていますが、同じ岩手県でも、地域によって肥満者割合が異なっている可能性があるのではないかという疑問が生じました。この疑問を解決すべく、岩手県北コホート参加者26,742名の登録時検査データの横断解析を行い、肥満に関連する項目の対象者属性を検討しました。
その結果、日本人全体と比較して肥満者が多く、特に男女ともにBMI30以上の高度肥満者が多いのが特徴でした。高度肥満者割合が高い順に市町村別にランキングをつけ、肥満者の多かった沿岸部町村(岩泉・普代・種市・田老・山形)、肥満者の少なかった北部山村(軽米・九戸・大野)、中間的な値を示した都市部である宮古市の3地域で肥満に関連する項目を比較しました。都市部に比べ沿岸部町村で高度肥満者(BMI30以上)割合が高く、町村地区の比較では、北部山村地区に比べ沿岸部町村で高度肥満者割合が高い結果でした。年齢階級別の比較では、全ての地域で20代の高度肥満者割合が日本全体の代表データに比べ高意ことが示されました。30代以降を比較すると、肥満者集積地域ではどの年代でも高度肥満者割合が一様に高かったのに対し、宮古地域や二戸地域では中年以降で肥満地域に比べ高度肥満者割合が低い結果となっていました。肥満者割合の地域差は女性でより顕著でした。肥満者集積地域では中年以降の世代で高血圧有病率、糖尿病有病率が宮古市住民と比較して有意に高いことがわかりました。
岩手県北部地域に限った解析であっても、肥満に関しては地域内に大きな地域差が存在しました。岩手県北部沿岸地区には高度肥満者が集積する地域があり、しかも高血圧症と糖尿病有病率が明らかに高率であることが示されました。岩手県北部沿岸地域のの肥満と糖尿病対策は緊急の課題であり、さらなる研究と対策立案が必要と考えられました。