研究成果の概要
脈拍数高値のみではなく徐脈も男性の脳心血管疾患の発症リスクである
蒔田真司 Atherosclerosis. 2014;236:116-20.
これまで国内外の地域住民コホート研究で、安静時心拍数が高くなるに従って心血管疾患発症または死亡が増加するとの結果が示されています.しかし、心拍数が低い人の心血管疾患発症リスクへの影響について言及された報告はなく、心拍数50回/分台程度の洞性徐脈を臨床的に問題とすべきかどうかは明らかにされていません.
本研究では、基本健康診査を受診した40-79歳の地域住民のうち、心血管疾患の既往がなく心房細動を有しない男性5,958例、女性11,818例を対象に、安静時脈拍数と心血管疾患発症との関連を前向きに解析しました.脈拍数への降圧薬服用の影響を排除するため、高血圧治療を行っている人は対象から除外しました.
平均5.6年の追跡期間中に45例の心筋梗塞発症、322例の脳卒中発症、32例の突然死が確認されました.3つの複合転帰による解析を行ったところ、男性では脈拍数60-69.5回/分の群に比べ脈拍数60回/分未満の群(調整ハザード比1.55)と80回/分以上の群(調整ハザード比1.72)で有意に心血管疾患の発症が多いことが分かりました(図1).女性ではこの様な有意な関連は確認されませんでした.転帰疾患別の解析では、脈拍数高値(80回/分以上)は脳梗塞と脳内出血のリスクとなり、徐脈(60回/分未満)は心筋梗塞と脳梗塞のリスクとなる傾向がありました.
脈拍数高値に加えて、徐脈も心血管疾患発症リスクとなる理由として、拡張期血圧の低下による脈圧の上昇、拡張期血圧低下による冠血流の減少(拡張期の中心血圧の低下)、洞結節機能障害の存在、スポーツ心臓症候群との関連、潜在的な甲状腺機能低下症(虚血性心疾患のリスク)の存在などが可能性として挙げられます.
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