研究成果の概要
岩手県北地域では高血圧未治療者に危険因子集積者が存在
本論文は、2004年から開始された岩手県北コホート研究の目的と研究デザイン登録調査方法について英語の記述でその概要を明らかにすることを目的としています。また、コホート研究の行われた岩手県は、日本でもっとも脳卒中死亡率が高い県として知られ、この地域の住民の循環器疾患のリスク要因保有率が高いことが推測されます。しかし、行政資料などでは個人の詳細データが収集されていないこともあり、実際にこの地域に住む人々のリスク要因保有状況に関しては知ることができません。本研究では、岩手県北コホート研究に参加した26469名のコホート研究登録時の調査データを用いて、岩手県北部地域住民の循環器疾患リスク要因保有状況を明らかにしました。
循環器疾患危険因子ならびに循環器疾患の新しいバイオマーカについて性齢階級別に要因の平均値や有所見率を算出し、更にさらに高血圧者と非高血圧者で分けて比較して同様の評価を行いました。検討結果、高血圧症、糖尿病、脂質異常症の有病率はそれぞれ男性で46.0%、7.6%、30.3%、女性で38.6%、4.0%、38.5%でした。高感度CRP値とBNPの平均値はそれぞれ男性で1.41 mg/Lと 26.5 pg/mL、女性で 1.01 mg/L and 23.7 pg/mLでした。 微量アルブミン陽性者は、男性で22.0% 、女性で 23.4%、心房細動有所見率は男女全体で1.56%でした。高血圧有病者の中で20% は降圧薬治療を受けておらず、血圧コントロールが不良と考えられました。高血圧症と脳卒中有病率の高い東北岩手県地域の住民では血圧コントロールが十分にされていない者が多数存在し、彼らは同時に多数のリスク要因を保有するハイリスク者であることが示唆されました。
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